日銀は先月31日の金融政策決定会合で、追加の政策金利引き上げに踏み切りました。引き上げ幅は0.15〜0.25ポイント上昇し、0.25%となりました。
追加の利上げの目的について植田総裁は「経済・物価はこれまで示してきた見通しにおおむね沿って推移しているが、輸入物価が再び上昇に転じており、先行き、物価が上振れるリスクに注意する必要がある状況となっている。こうした状況を踏まえ、2%の物価目標の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和の度合いを調整することが適切であると判断した」と述べています。
現在マイホームを検討している方には、住宅ローンの金利への影響が最も気になるところでしょう。
このコラムでは日銀の利上げと住宅ローンの今後の金利について考えてみます。
日銀は日本銀行の略で、諸銀行の中枢を担う「中央銀行」として位置付けであり、『銀行の銀行』と言われています。
政策金利とは、日銀が誘導目標として設定する“短期金利”のことで、一般的には景気が悪くなると金利が下げられます。
そうすることで、各金融機関は低い金利で日銀から資金を調達できるため、企業や個人の利用者にも貸出金利が低い状態で貸し出され、消費が拡大しやすくなります。
これが経済活動の活性化になり、景気が上がる。景気が上がると物価は上昇傾向になります。
反対に、景気が良い状態では日銀は金利を上げる。金利が上がると前述の仕組みに従って今度は逆に消費は縮小傾向になります。そうすると景気の加熱が抑制されていきます。
こういった方法で日銀は景気の調整をしているのです。
それではもう少し踏み込むと、景気が加熱すると何が起こるのか?
景気が良いと物がよく売れて、需要が供給を上回り、物の値段が上がります。他にも、賃金や原料も高騰し、物を作るコストが上がり、物の値段が上がるというケースもあります。これをインフレと言います。
インフレが起こると、ますます資金需要が高まり金利が上昇していきます。そうすると国内のみならず「円というお金の価値が下がる」ため、今話題の『円安』が起こります。円安は海外の観光客(インバウンド)が増え、輸出業が活性化されるのはメリットですが、輸入価格が高騰したり、渡航費用や現地での買い物が高くつくなどのデメリットがあります。
そしてインフレが続くと「ハイパーインフレ」となり、失職する人、家を失う人、お金があっても物不足で買えない人、国外へ脱出する人が増えるなどが出てきて経済が大混乱となるのです。
インフレの対策として金利を上げる。そうすると人々は預貯金にお金を回し、買い控えが発生し、インフレが緩和されてきます。
こういった景気の循環に合わせて金利は上下するサイクルを繰り返すという仕組みになっています。
では、住宅ローンへの影響はどうなのでしょうか。
以前のコラムでもお伝えしましたが、住宅ローンには「変動金利」と「固定金利」があります。経済状況に応じて毎月の返済額が変わる「変動金利」は利上げによる影響が出る可能性が高いです。
今回の利上げ幅は大きなものではありませんでしたが、植田総裁によると「見通しどおり経済・物価が動いていけば引き続き金利を上げていく」としています。
日銀が17年ぶりに利上げをしたという既成事実がすでに為替に影響を及ぼしているのです。三菱UFJ銀行は利上げ決定同日、早くも9月から短期プライムレートを発表しました。
今後利上げが進むという雰囲気が漂うなか、他の金融機関も引き上げに続くと予想されます。
すでに住宅ローン借入をしている利用者への影響は、変動金利の借入の場合、適用金利が高くなり返済総額は増加するが、大抵の銀行が返済額調整は5年ごとに設定しているため、当面の間は返済額が変わらないでしょう。
植田総裁によると、今回の利上げは長期的な賃金上昇を見込んで決定しており、先に賃金が上がっていき、その後利払い額増加になるため負担は軽減される見込みとしていますが、引き上げのインパクトは世間に大なり小なり衝撃を与えました。
では、変動金利を念頭において、金利が0.25%上がると一体どれくらい返済額に差が出るのか試算してみましょう。
【借入れ条件】
金 利 |
0.330% (変動後0.580%) |
借入れ金額 |
3,000万円 |
借入れ期間 |
35年 |
ボーナス払い |
なし |
【金利0.25%上昇時の返済額の比較】
金 利 |
0.330% |
0.580% |
毎月返済額 |
7万5,642円 |
7万8,940円 |
総 返 済 額 |
3,177万円 |
3,316万円 |
総支払利息額 |
177万円 |
316万円 |
いかがでしょうか。上の表のように、金利が0.25%上昇すると、総支払額は139万円もの差が出てきます。
139万円の貯金を貯める労力を考えると、僅かな金利上昇でもローン利用者が敏感になるのも頷けます。
金利の引き上げが継続的に行われれば、さらに返済額が増える懸念があり、今後の金利の動向に注視が必要です。
例えば、2023年7月の日銀の長期金利の上限引き上げの容認を発表した際の事例から鑑みると、日銀が次の10月末の金融政策決定会合で利上げ追加をした場合、11月頃各銀行が短期プライムレートの引き上げを行い、早ければ12月までに住宅ローンの金利基準に影響が出る可能性があります。
追加利上げの予兆がある今、住宅購入をお考えの場合、お早めの行動をおすすめします!
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